第5章 【五条悟】勿忘草の悪魔 II**
特に女性たちの視線は、五条さんを見たあと、なぜか隣にいる私にも向けられていた。
心なしか、値踏みするような冷たい視線。
そりゃあ、そうだよね。
今日の私は、五条さんにいただいた服を着ている。
白いブラウスに、淡いブルーのふんわりとしたスカート。
人間の普通の女の子が着るような、可愛らしい服だ。
きっと変ではないのだが、隣にいる人の顔面偏差値が高すぎて、服の力だけではどうにもならない。
淫魔のくせに先輩のような色気もないし。
五条さんの専属淫魔だけど、なんだか申し訳ない気持ちになってくる。
そう思いながら、なんとかクレープを飲み込もうとしていると。
五条さんが、ふいに私の口元へ長い指を伸ばしてきた。
親指の腹で、私の唇の端を優しく拭う。
「クリーム、ついてる」
「あっ……すみま――」
謝ろうとした私の目の前で。
五条さんはその親指を、ごく自然な動作で自分の口元へ運び、ぺろりと舐めとった。
「~~~~っ!?」
これは、先輩が言っていたやつ。
イケメンにしか許されていない禁断のクリームぺろり。
実在したんだ……。
胃袋ははち切れそうなのに、心臓まで休まる暇がない。
本当に困る。
甘いものより、五条さん本人の方がよっぽど身体に悪い気がする。
「さ、次は期間限定のプレミアムメロンパフェ行くよー!」
「まだ食べるんですかぁぁっ!?」
五条さんの底なしの胃袋とマイペースさに巻き込まれっぱなしの、特別課外活動。
今日一日、私の身は持つのだろうか。
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過酷な甘味巡りをなんとか生き延びたあと。
『じゃあ次は涼しいところね』という五条さんの気まぐれで、私たちは水族館へやってきた。
「あ、見て。あのペンギン、に似てる」
「……え?」
指差された先を追うと、一羽のペンギンが水槽の前をうろうろしていた。
足を滑らせそうになっては、慌てたように羽をぱたぱたさせている。
周りのペンギンたちが優雅に泳いだり微動だにせず立っていたりする中で、その一羽だけがやたらと挙動不審で落ち着きがない。