第5章 【五条悟】勿忘草の悪魔 II**
「……どういうこと、とは?」
「僕が帰ってこなかった四日間で、どうしてこんな精気不足になってるわけ?」
「そ、それは……」
どう説明すればいいのかわからなくて、言葉に詰まる。
言えるわけがない。
自分の精気を削って、会社に提出していたこと。
その理由を聞かれたら、路地裏で見たことまで話さなくちゃいけなくなる。
どうしよう。
黙り込んでいると、突然、五条さんが私の頬をつまみ、むにゅっと横に引っ張った。
「ふにゃっ……!?」
「僕が連絡しても、全然既読つかないし」
「……え」
連絡?
あ、スマホも見る気力なくてテーブルの上に置きっぱなしだった。
「嫌な感じがしたから、予定切り上げて帰ってきたの。そしたら案の定、僕のベッドで干からびかけてるし」
予定を、切り上げて。
私のために。
どうして。
どうして、そこまでしてくれるの。
「ま、言いたくないならいいけど」
「……ごひょ、さん?」
五条さんは私の頬をつまんだまま、少しだけ眉を寄せた。
「今度から、足りなくなったらちゃんと言いなよ……心配だから」
心配。
また、それ。
私は淫魔なのに。
どうしてそんなふうに、当たり前みたいに言ってくれるんだろう。
「……はい……」
小さく返事をすると、五条さんはようやく私の頬から手を離した。
でも、すぐに今度はスッと私の顎をすくい上げる。
「さっきのじゃ、まだ全然足りないでしょ。今日は特別サービス」
「と、特別サービス……?」
聞き返すより早く、五条さんの顔が近づいてきた。
「五条さん、さっき充分いただきましたからっ……!」
慌てて手で口元を覆い、首を横に振った。
だめ、これ以上はもらえない。
本当は……もっと欲しい。
キス……も、してほしいけど。
それに、今の五条さんの顔面偏差値の高さでキスをされたら、心臓が爆発して死んでしまうかもしれない。
距離を取ろうとする私を見て、五条さんはふっと笑い声を漏らした。
「尻尾はそう思ってないみたいよ」
「……へ?」
言われて視線を落とすと、尻尾が五条さんの手首にくるくると巻きつき、あろうことか、彼を私の方へと力いっぱい引っ張っていたのだ。
まるで、『キスして♡』と懇願するように。