第5章 【五条悟】勿忘草の悪魔 II**
薄く目を開けると、ぼやけた視界の向こうに、白い髪が揺れていた。
私の頬を包む、大きな手。
すぐそばにある、吐息。
誰かが、私にキスをしていた。
(五条さん、だよね……)
私の意識が戻ったことに気づいたのか、五条さんは唇を離す。
いつもは黒い布で隠されているはずの目元が、今は露わになっていた。
長い白い睫毛に縁取られた瞼が、ゆっくりと持ち上がる。
その瞬間、私は息をするのを忘れてしまった。
青い。
ただ青いだけじゃない。
空みたいで、海みたいで、宝石みたいで。
見つめられていると、どこまでも深く覗き込まれているような……って、そ、そうじゃなくてっ!?
身体を起こし、毛布を握りしめたまま後ずさる。
「だ……だれ……?」
口からこぼれ落ちた私の第一声に、その美しい青い瞳が不満げに細められた。
そして、私の鼻先を指でピンッと軽く弾く。
「あぅっ……」
「グッドルッキングガイ、五条悟ダヨ〜。、契約者の顔忘れちゃったわけ?」
その声と、ふざけた言い回しを聞いて、ようやく私の頭の中で『目の前の信じられないくらいかっこいい人』と『いつもの五条さん』が結びついた。
「え、ええええっ!? ご、五条さん!?」
私がすっとんきょうな声を上げると、五条さんは呆れたように肩をすくめる。
「ちょっと、そんなに驚く?」
「いや、だって……あまりにも違いすぎて……」
私は落ち着かなくて、チラチラと五条さんの顔を盗み見た。
五条さん、めちゃくちゃイケメンなんですが!?
こんな素敵なお顔なのに、どうしていつも隠してるんだろ。
あっ……モテすぎて困るとか。
ありえる。
「それより、」
五条さんの手が伸びてきて、親指の腹が私の頬をそっと撫でた。
さっきまでのキスとは違う、ひどく慎重な触れ方。
「これは一体どういうこと?」