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【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第5章 【五条悟】勿忘草の悪魔 II**


「つ、疲れたので……お風呂、入ってきます!」



私は五条さんの横をすり抜けて、バスルームへと逃げ込んだ。
バタンと勢いよく扉を閉め、内鍵をかける。

扉一枚隔てただけなのに、ようやく息ができた気がした。



「、なんかあった?」



ドアノブが回される。
けれど、鍵がかかっていることがわかると、五条さんは小さく息を吐いた。



「僕、明日から出張でしばらく帰ってこれないよ? だから、今日のうちに――」

「た、たっぷりいただいているので……っ。しばらくは、問題ない、です……! 出張、気をつけて行ってきてください」



五条さんの言葉を遮ってしまった。
その先を聞いてしまったら、きっと断れなくなる気がしたから。



「がいいって言うなら、僕はいいけど……」



そう言って、五条さんはドアの前から離れていった。
足音が遠ざかっていくのを聞きながら、私はその場にずるずるとしゃがみ込んだ。


これでいい。
これでいいんだ。


五条さんの精気は甘くて、あたたかくて、安心してしまう。

でも、私は見てしまった。
知ってしまった。


精気を奪われすぎた人間が、どうなるのか。
淫魔が、何をする存在なのか。


五条さんから精気をもらうということは、五条さんから奪うということ。
その精気を、会社に差し出すということ。


そんなこと、できないよ。


会社からは「もっと回収しろ」と言われているのに。
淫魔としての役目を、自分から放棄している。



会社には、最低限の精気を提出しよう。
足りない分は、自分を削ればいい。

私が少し我慢すれば、それで済むんだから。


そう自分に言い聞かせながら、私は膝に額を押しつけた。



どうして私は――。


淫魔として生まれてきてしまったんだろう。



最初から、はっきりしていたはずなのに。


五条さんは、私たちを祓う側の人で。
私は、祓われる側の淫魔で。


専属契約をしても。
名前をつけてもらっても。
同じ部屋で過ごしても。
キスをしてもらっても。


その線だけは――どれだけ手を伸ばしても、絶対に越えられないのだと。
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