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【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第5章 【五条悟】勿忘草の悪魔 II**


「――、おかえり。出かけてたの?」



ソファに深く腰掛けていた五条さんが、こちらを向いてひらひらと手を振った。


五条さんの顔を見たら、一瞬息ができなくなった。

平常心、平常心。
気づかれちゃだめ。



「ちょっと、コンビニに……行ってて……」



五条さんは、私の手元に視線を滑らせた。



「コンビニ行ったのに、何も買わなかったの?」

「……ぁっ」



そうだ、あの時落としちゃったんだった。
コンビニ行って、何も持ってないなんて変だよね。
なんとか、誤魔化さなきゃ。



「のことだから、レジに商品置き忘れてきちゃった?」

「ち、違いますよっ」



普段と変わらず、私を揶揄う五条さん。
さっきの路地裏であったことなんて、最初からなかったみたいに。



「えっと……っ、コピー機を使おうと思って……」

「何をコピーするつもりだったの?」

「……白地図を」

「スマホのマップあるじゃん」

「か、紙派なので……っ。自分の足で歩いて、正確な地図を作りたいなって……」

「平成の伊能忠敬か」



うぅ、もう自分でも何を言っているかわからない……。

嫌な汗をかいている私をよそに、五条さんはソファの背もたれから身を起こし、私に向かって手を伸ばしてきた。



「それなら体力いるでしょ。おいで、。精気分けてあげる」



いつもなら、嬉しいお誘い。
五条さんに「おいで」と呼ばれるだけで、尻尾が勝手に揺れてしまうくらい。


なのに、今は。
伸ばされたその手が、同族の片翼を引き裂いた手と重なって見えて。

私は伸ばされた手を取るどころか、一歩後ずさってしまった。



「……?」

「きょ、今日は……だ、大丈夫ですっ! 私、お腹いっぱいですから……っ!!」



嘘だ。
全然、大丈夫じゃない。
お腹いっぱいでもない。



「この前みたいに、気絶させたりしないから。ほーら」



ソファから立ち上がり、五条さんが近づいてくる。

だめ。
今は、こっちに来ないで。
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