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【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第5章 【五条悟】勿忘草の悪魔 II**


「さて。教えてよ、君たちの『会社』のこと」

「だ、れが……呪術師なんかに、言うか……っ!」

「いいのかなー、そんなこと言って。ここ最近、人間から精気を大量に回収してるみたいだけど、何かいいことでもあるのかな?」



淫魔がギリッと歯を食いしばり、五条さんを睨みつける。
その目は、最後まで答える気がないと言っていた。

五条さんはため息を吐きながら、彼女の片翼を掴むと――躊躇いもなく、根元から引き裂いた。



「――ギャアアアアアアアッ!!?」



鼓膜を劈くような凄惨な悲鳴が響き渡る。


羽は精気で具現化しているが、私たちにとって身体の一部みたいなもの。
それを虫の羽でもむしり取るみたいに、こんなにもあっさりと引き裂かれてしまう。

彼女の痛みが、自分の背中にまで走ったような気がした。



「早く言えよ、祓うぞー。ま、言っても祓うけど」



絶叫する彼女をよそに、五条さんは引き裂いた片翼をポイッと捨てる。


これが、五条さんの仕事。
私たちを祓う、呪術師の顔。

そこには、私が知っている五条さんはどこにもいなかった。



「……ぁ」



レジ袋がするりと手から滑り落ちる。

カサッ、と乾いた音のあと。
べちゃり、と柔らかいものが潰れる音がした。


透明なカップの蓋が外れて、白い生クリームが中からはみ出している。
五条さんに食べてもらおうと思って買った、生クリームシフォン。



「誰かいるの?」

「……っ!」



五条さんが、こちらをゆっくりと振り向いた。


気づかれた。
どうする?


(見つかる前に、ここから離れなきゃ)


だけど、片翼を失った淫魔がまだ苦しそうにもがいている。
このままじゃ、本当に祓われてしまう。


そうだ。
五条さんにちゃんと話せば、わかってくれるかもしれない。
もうこれ以上傷つけないでって。
この淫魔にも、何か事情があったのかもしれないって。

そう話せば、五条さんなら――。


そう思って、一歩だけ足を踏み出しかけた。
でも、すぐに動けなくなる。


どうして?

どうして五条さんが、私の話だけは聞いてくれるなんて思ってるの?


私たちは契約を結んでいるだけで。



私だって――彼女と同じ淫魔なのに。
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