• テキストサイズ

【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第5章 【五条悟】勿忘草の悪魔 II**


「は、はいっ! です!」

『――? お前は217番だろ』

「……っ」



あ、そうだった。
会社での私は、じゃない。

217番だ。
五条さんに何度も名前を呼ばれるうちに、すっかり忘れていた。

久しぶりにその番号で呼ばれると、なぜかひどく他人行儀に感じられた。



『初仕事で専属契約を結んだのは上出来だ。お前には期待している』

「あ、ありがとうございますっ!」



部長に褒められた!
今なら、制服の始末書も大目に見てもらえるかもしれない。



「あ、あの部長、制服――」

『217番、今後は契約者からの精気回収量を増やせ』

「……え?」

『お前が今受け取っている量では足りない』

「で、ですが……マニュアルでは、一度にいただいていい精気の量は決められています。これ以上は、契約者さんの身体に危険が……」

『217番』



ただ番号を呼ばれただけなのに、その声には有無を言わせない圧があった。



『お前の役目は、会社の指示に従い、契約者から精気を回収することだ。判断するのはお前ではない』

「でも……っ」

『お前は淫魔だ。忘れるな』

「……っ」

『近々、お前に『特別な任務』を下すことになるだろう。それまでは契約者を見張り、可能な限り精気を回収しろ』

「あ、あの、部長……それは、どういう――」



部長は私の質問に答えることなく、通話を切った。
ツーツー、という冷たい切断音だけが、聞こえる。

スマホを握りしめたまま、私は嫌な汗が背中を伝うのを感じた。


どうして部長は急に回収量を増やすなんて。
それに、特別な任務ってなに?


……もしかして。
五条さんが呪術師だということに、部長は気づいてるのだろうか。



『呪力を使って、私たちみたいな人外や呪いを祓うのが仕事よ。要するに、私たちの天敵中の天敵』



先輩がそう言っていたけれど。
私が知っている五条さんは、とてもそんな人には見えなくて。


甘党で。
ちょっと意地悪で。
すぐ人のことからかって。
淫魔の私に名前をくれて。
最後まではしてくれないけど、キスはしてくれて。

だけど……たまに少し寂しそうな顔をする人。


そう自分に言い聞かせようとするのに、朝方に血の匂いをさせて帰ってきた五条さんの姿が、頭にちらついて離れなかった。
/ 333ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp