• テキストサイズ

【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第5章 【五条悟】勿忘草の悪魔 II**






あの部屋の前で五条さんに止められてから、数日が過ぎた。


私は一人で広いリビングのソファに膝を抱えて座っていた。

テーブルの上には、五条さんがこの前買ってきてくれたプリン。
食べようと思って冷蔵庫から出したのに、蓋を開ける気にもなれない。


私はそのプリンを眺めながら、ふぅとため息をひとつ吐いた。


(聞いたら……答えてくれるのかな)


あの日から、私はあの部屋には近づいていない。
五条さんも、あの部屋のことには一切触れない。

いつも通り私をからかって。
いつも通り甘いものを買ってきてくれて。
いつも通り、私の名前を呼んでくれる。


それなのに、あの部屋のことを思い出すたび、胸の奥が少しだけ重たくなる。




……はっ!?
まさか、えっちな本が置いてあるとか!?

でも、それなら別に私に隠さなくてもいいのに。
だって私は淫魔だし。
そういうものには、むしろ理解がある方だと思うし。


いや、だめだめ。
五条さんにも、知られたくないことくらいあるよね。

うん、もうあの部屋のことは忘れて、別のこと考えよう。


……五条さん、今頃何してるのかな。
今日は、帰ってくるのかな。

帰ってきたら、また「ただいま」の代わりみたいにキスしてくれるのかな。
それとも、今日は疲れてるかな。


あれ?
結局、私……五条さんのことばっかり考えてない?

これは、あれだ。
お仕事。
契約者さんのことをちゃんと気にかけるのも、専属淫魔の大事なお仕事。

だから、五条さんのことを考えてしまうんだ。

……たぶん。


そう自分に言い聞かせた、その時だった。




――ジリリリリリリリッ。




リビングに、けたたましい着信音が響き渡った。
音のした方を見ると、テーブルに置かれた、会社支給の黒いスマホが鳴っていた。


画面に表示された相手を見て、スマホを落としそうになる。



『発信者:部長』



「ぶ、部長……!?」



部長から電話!?
急にどうして!?

顔すら見たことのない、私たち淫魔の上司。
指示はいつも紙の書類やメールで下されるだけ。

だから、部長から直接電話がかかってくるなんて、聞いたこともない。


慌てて居住まいを正し、震える手で通話ボタンを押した。
/ 333ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp