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【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第5章 【五条悟】勿忘草の悪魔 II**


「……ここ、なんの部屋だろ」



リビングや寝室、バスルームには自由に出入りしているけれど、この奥の部屋だけは入ったことがない。
いつもドアが閉ざされていて、五条さんが出入りしているところも、見たことがなかった。


物置かな?
せっかくだし、ここも掃除しておこうかな。


私は深く考えないまま、そのドアノブに手を伸ばした。
ノブを回そうとした――その瞬間。



「――何してるの」

「ひゃっ!?」



振り返ると、そこには、出かけていたはずの五条さんが立っていた。



「ご、五条さん……っ、お仕事に行ったんじゃ……」

「スマホ忘れてね」



目隠しのせいで表情の全部は見えない。
それなのに、今の五条さんが笑っていないことだけは、はっきりわかった。



「あ、あの……お掃除、しようかと……」



私が震える声でそう言うと、五条さんは無言のまま私の手首を掴み、ドアノブから引き離した。



「……」

「は、はい……」

「そこは掃除しなくていいから」

「……っ、ごめんなさい」



はっきりとは言わなかったけど。
この部屋には入るなと言っていることが、どんなに鈍い私でもわかる。


それから五条さんは、何事もなかったみたいにいつもの軽い空気を纏って、私の頭をぽんぽんと撫でた。



「そうだ。の好きなプリン、冷蔵庫に入ってるから。おやつに食べて」

「あ、ありがとうございます……」

「じゃ、僕は行くね。戸締まりしっかりねー」



ひらひらと手を振りながら、五条さんは玄関へと向かっていった。
パタン、とドアが閉まる音が響く。


残された私は、五条さんに掴まれた手首を押さえ、目の前にある部屋を見つめた。


(……この部屋には、一体何があるの)


どうしてこんなに、胸がぎゅっと締め付けられるみたいに痛いんだろう。


私がどんなに失敗しても、恥ずかしいところを見られても、呆れながら笑ってくれていた五条さん。

その優しさに、私はいつの間にか甘えていたのかもしれない。
何をしても許されていると、どこかで思っていた。


五条さんには、絶対に私を立ち入らせない『聖域』がある。
そのことを、今日初めて知った。
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