第4章 【五条悟】勿忘草の悪魔**
「あんなに気持ちよくしておいて、生殺しすぎます!」
「もう時間だ。さー、仕事仕事」
私の必死の訴えも虚しく、五条さんはへらへらと笑いながら、あっさりとベッドから降りてしまった。
手早く身支度を整えると、そのまま寝室を出ていく。
(うぅ……やっぱり、私には先輩みたいな大人の色気がないからかな……)
むぅーっと頬を膨らませて、シーツに顔を埋める。
しばらくすると、五条さんが私の買ってきたパンの紙袋を片手に、寝室のドアからひょいっと顔を覗かせた。
「これ、もらってくよ。今日はもう帰ってこれるかわかんないから、先寝てて」
「……はーーーい」
私はベッドの上から、完全にふてくされた声で返事をした。
専属淫魔としての自信、見事に粉砕されました。
もう今日は、一日中ネトフリ見てベッドでいじけてやるんだから。
すると。
五条さんが寝室の前から立ち去る直前、ふと足を止め、振り返った。
「あ、言い忘れてた」
「……なんですか」
「そのワンピース、似合ってる。、かわいいよ」
ひらひらと手を振って、五条さんは足早に玄関へと消えていった。
ガチャッ、……パタン。
玄関のドアが閉まる音が聞こえる。
「…………ぇ」
か、可愛いって言った!?
あの五条さんが!?
私のこと、かわいいって!?!?
ドクン、ドクン、ドクン!!
さっき絶頂を迎えた時とは全く違う理由で、心臓がうるさい。
顔中が一気に沸騰したみたいに熱くなる。
「な、ななな、何これーーーーっ!!?」
私は枕を抱きしめながら、広いベッドの上をあっちへこっちへとのたうち回った。
尻尾も嬉しさを隠しきれない犬のように、ものすごい勢いでぶんぶんと空を切っている。
さっきまで、えっちしてもらえなかったことが悔しくて、専属淫魔としての自信もぺしゃんこになっていたはずなのに。
「かわいい」と言われただけで、そんなこと全部、ふわふわとどこかへ飛んでいってしまった。
精気をもらった時とは違う。
胸の真ん中が、甘くて熱いものでいっぱいになるような感じ。
やっぱり、五条さんは不思議な人だ。
五条さんさんに褒められただけで、こんなに嬉しくなるなんて。
先輩。
私、淫魔としてなにかがおかしいかもしれません。