第3章 【伏黒恵】君に響くカンパニュラ**
重なった唇の角度を変えて、啄むように何度も口づける。
それから下唇を軽く甘噛みすると、小さな吐息とともに、の唇がわずかに開いた。
その隙間に、舌を滑り込ませる。
「……っ、」
の喉の奥から、甘く掠れた息が漏れた。
躊躇うの舌先を捕まえて、深く絡め取るように吸い上げる。
の肩がびくっと跳ねたが、逃げようとはしなかった。
俺のシャツを掴む指に力を込めて、慣れないながらも一生懸命に応えようとしてくる。
(そんなことをされたら、余計に止まれなくなるだろ)
唇を少しだけ離しては、息を継ぎ、また深く舌を絡める。
の甘い唾液ごと飲み込むように、何度も、何度も深く貪った。
部屋には、重なる衣擦れの音と水音。
それに、徐々に荒くなるお互いの息遣いだけが響く。
さっきは、何が起きたのかも分からなかった。
でも、今は違う。
(俺、本当にとキスしてる……)
頭の中でずっと想像していたことが、目の前で起こっている。
その現実感のなさに、さらに歯止めが利かなくなった。
どちらが先に動いたのかなんて分からない。
ただ、互いに縋るみたいに距離を詰めていた。
の膝裏がベッドの縁に触れ、その身体が後ろへ傾く。
咄嗟に背中へ腕を回したが、勢いを止めきれず、そのまま二人でベッドへ倒れ込んだ。
「……っ!」
気づけば、ベッドへ沈んだを、俺が上から囲い込む形になっていた。
ベッドに横たわると、視線が絡む。
少し乱れた髪。
熱を帯びて真っ赤に染まった頬と、潤んだ瞳。
荒い呼吸に合わせて、胸が上下している。
一度は押し込めたはずの熱が、を見下ろした瞬間にぶり返した。