第3章 【伏黒恵】君に響くカンパニュラ**
「……」
名前を呼ぶと、の睫毛が震えた。
「本当にいいんだな」
こんなことを聞いておいて、もう引き返せる気なんてほとんどない。
それでも、聞かずにはいられなかった。
自分だけじゃないって。
も俺を求めてくれているって。
その確信が欲しかったのかもしれない。
俺の問いかけに、は少しだけ目を伏せた。
けれど、すぐに俺のシャツを掴む指に力をこめ、ちゅっと触れるだけのキスを俺の唇に落とした。
(こんなの……我慢する方が無理だろ)
そのあまりにもいじらしい仕草に、気づけば、また唇を重ねていた。
それと同時に、の着ている服の裾へと指を滑り込ませ、ゆっくりと服をたくし上げる。
あらわになった白い素肌に、思わず息を呑んだ。
水色のレース。
それに、小さな花柄があしらわれた下着。
(一緒に暮らしてた頃は、こんなの着けてなかったよな……)
洗濯物に紛れて、たまたま目に入った記憶がある。
あの頃は、もっと飾り気のないものばかりだった。
それが、いつの間に。
俺の知らないところで、は俺が知っている子どものままじゃなくなっていた。
これを選んだ時、は何を考えていたんだろうか。
誰かに見られることなんて――いや、そんなことは考えたくもない。
ただ、今これを見ているのが俺でよかったと、心の底から思った。
俺の視線に気づいたのか。
が恥ずかしそうに顔を背けて、両手で自分の胸元を隠した。
その手首にそっと触れる。
「……見たい」
拒まれるかと思ったが、は真っ赤な顔のまま、ぎゅっと目を伏せただけだった。