第3章 【伏黒恵】君に響くカンパニュラ**
その震えで、ようやく気づく。
いや、今考えるべきことはそこじゃない。
声。
が声を出した。
だめなんじゃなかったのか。
縛りがあったんじゃないのか。
「、声……」
そう言いかけると、が何かを言おうとして唇が小さく開く。
けれど、もう声は出てこなかった。
唇が何度も開いては閉じて、必死に何かを伝えようとしている。
「大丈夫だ。無理して出さなくていい」
俺はを支えるようにして一度身体を離すと、机の上に置いてあったノートとペンを取った。
それをに渡してやる。
「書けるか。ゆっくりでいいから」
はおずおずとペンを受け取って、ノートにペン先を落とす。
かすれた線が、白い紙の上をゆっくり進んでいく。
『恵くんは?』
『体、変じゃない?』
なんで今、俺の心配なんかしてんだよ。
姑獲鳥との縛りを破って何かあるのは、お前の方だろ。
「俺は平気……」
いや、平気じゃない。
が声を出したこと。
どこにも行かないでの意味。
それに、一番は……。
「キ、ス……ナン、デ」
俺はどうして、こんな片言になってんだよ。
は真っ赤になったまま、ノートをぎゅっと抱え込むようにして俯いていた。
そんな顔すんな。
言ったこっちまで、おかしくなるだろ。
また期待してしまう。
もしかして。
本当に、もしかして。
も、俺と同じ気持ちなんじゃないかって。
今なら、言えるんじゃないか。
家族でも、幼馴染でもない。
ずっと言えずにいたものを、ちゃんと。
に、好きだって――。
けれど、最後の一言を告げる前に。
がノートにペン先を落とした。