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【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第3章 【伏黒恵】君に響くカンパニュラ**






シャワーから戻り、バタンと部屋のドアを乱暴に閉める。
今日はもう寝てしまおうとベッドに向かう足が、ふと止まった。

机の上のハンドタオルに何となく手を伸ばす。
たかがハンドタオルなのに、あの時、がこれを渡してきた指先まで思い出せてしまう。


自分でも呆れる。
のことならいくらでも思い出せる。




朝、寝癖を隠すみたいに髪を押さえながら、食堂に入ってくる顔。
ノートの端に小さな落書きをして、気づかれた瞬間に慌てて隠す顔。
任務帰り、疲れているくせに「大丈夫」と書いて見せる強がった顔。
俺が隣に座ると、少しだけ力を抜く横顔。


に声がなくても、何も問題ないと。
俺は誰よりものことを分かっている、そう自負してきた。



なのに……。

駅前で見たの顔だけは分からない。


(……あんな顔、すんなよ)


思い通りにならない苛立ち。
がいつか俺から離れていくかもしれない焦り。
触れたい。
抱き寄せたい。
俺だけを見てほしい。



そんな醜くて真っ黒な感情が、抑えきれない熱になって下腹部に溜まっていく。


(……最悪だ)


またベッドに倒れ込み、もう片方の手をスウェットの下へ滑り込む。
ひどく熱を持ったそこに触れると、背筋が粟立った。



「……はぁっ……くそ、……っ」



本当はこんな形で、を考えたくない。
それでも、頭の中では何度も身勝手に触れて、汚して、俺のものにしている。

最低だ。
ごめん、。
こんな俺を許せなんて言えない。

もうお前を家族としてなんて見れない。



俺は。



のことが……――。










「……っ、……好きだ、……っ」



自分の声が暗い部屋に落ちた、その瞬間。

どさっ、と何かが床に落ちる音がした。


反射的に身体を起こして、音のした方を見る。
床にはコンビニの袋が落ちて、中でペットボトルが転がる音がした。
その横に、見覚えのある俺のシャツがくしゃりと広がっている。


視線を上げると、ドアの近くに人影が立っていた。
顔に影がかかっていたが、立ち尽くすその気配で、誰なのか分かってしまう。



今一番会いたくなくて、会いたいやつ。
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