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【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第3章 【伏黒恵】君に響くカンパニュラ**


「さん、声出せないっていうの本当なの? なんか、そういうの男受け狙ってるみたいで、あざといっていうか」



一瞬、何を言われたのか分からなかった。


男受け。
あざとい。

その言葉と、がどうしても結びつかない。

声が出せなくて、言いたいことを飲み込むしかなかった顔。
急に話しかけられて、ノートを開く前に相手が行ってしまった時の、置いていかれたような目。
伝わらなくて、悔しそうに唇を噛んでいた横顔。

そんなものを、こいつは何も知らない。

知らないくせに。
分かったような顔で、を笑うな。



「離せ」



強めに腕を振り払うと、同級生は少しよろめいて、それから不満そうに唇を尖らせた。



「伏黒くんだって、同情で一緒にいるだけでしょ。中学の時、言ってたじゃない。『あいつの言いたいこと、分かんの俺くらいだろ』って」



そんなことを言った気はする。
けど、それは。

同情なんかじゃない。
義務でもない。
家族だからでもない。


そんなものなら、とっくに手放せている。
いつからかなんて分からない。

ただ、気づけばを探していた。
声のないあいつが、何を言いたいのか。
何を我慢しているのか。
何を見て、何に傷ついているのか。

そういうものばかり、勝手に目が追うようになっていた。

が少しでも安堵した顔を見せると、自分の中で張り詰めていたものが緩むのが分かった。

その一方で、を理不尽に傷つける奴がいれば、本気でそいつを壊してやりたいと思うくらい、冷たい怒りが腹の底に沈んでいく。


それを他人に同情なんて言葉で片づけられるのが、どうしようもなく不快だった。



「あー、うるせえ」



自分でも驚くくらい、声が低くなった。
同級生は怯んだような顔をして、固まった。



「たまにいるよな、お前みたいなやつ。人を下に見ないと、自分の立ってる場所も分かんねえやつ」

「もう連絡してくるな。にも近づくな」



そう言って背を向けようとした、その時だった。
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