第3章 【伏黒恵】君に響くカンパニュラ**
𓂃 side:伏黒恵 𓂃
高専に戻ると、俺は部屋の電気もつけずにベッドへ倒れ込んだ。
天井を見ているはずなのに、目に浮かぶのは駅前で見たの顔ばかり。
青ざめた顔。
泣きそうに揺れた目。
俺から一歩、後ずさった足。
逃げるように走っていった背中。
(……何なんだよ)
胸の奥に苛立ちが溜まっていく。
けれど、それを誰に向ければいいのか分からない。
あの中学の同級生にか。
急に乱入してきた五条先生たちにか。
それとも、何も分からないまま、を追いかけることもできなかった自分にか。
あいつがあんな顔をした理由が分からない。
あの同級生と連絡先を交換してから、何度かメッセージが来た。
最初は修理代のことだったが、好きなタイプだの、彼女はいるのかとか。
くだらない話ばかりで、正直うんざりしていた。
修理代は振込をすれば済む話なのに、向こうは「直接会いたい」と言ってきた。
面倒だった。
直接会う理由なんて、本当はどこにもない。
だけど放っておけば、またに何か突っかかってくるかもしれない。
だから俺は、たちとは別の任務帰りに会う約束をした。
それなら、に言う必要もない。
あいつに余計な気を使わせることもない。
そう思っていた。
駅前に着くと、あの同級生はすでに待っていた。
「あ、伏黒くん!」
俺を見つけるなり、やけに明るい声で手を振ってくる。
正直、最初は顔も名前もすぐには結びつかなかった。
中学の時、同じクラスだった。
その程度。
「来てくれて嬉しい」
嬉しい?
修理代の話をしに来ただけなのに、何がそんなに嬉しいのか分からない。
「で、いくらだったんだよ」
さっさと用件を済ませたくてそう聞くと、そいつはカバンから領収書を取り出す。