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【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第3章 【伏黒恵】君に響くカンパニュラ**


「俺は――」



恵くんが何かを言おうとして口を開く、その瞬間――。
胸を押していた手で恵くんのシャツを握りしめていた。

足の指に力を込めて、背伸びをする。
それでも、私よりずっと背の高い恵くんには届かなかった。


恵くんのシャツをさらに強く握りしめる。
縋るみたいに。
引き寄せるみたいに。

ぐっと下へ引っ張ると、恵くんの身体がわずかにこちらへ傾いた。







(……恵くん、好き)







気づいた時には、恵くんの唇に自分の唇を押し当てていた。


触れた瞬間、恵くんの身体がびくりと強張る。
掴まれていた手首の力が、一瞬だけ緩んだ。


私の涙が頬を伝って、二人の唇の間に落ちた。
初めてのキスは、漫画のように甘くなんてなかった。


苦しくて。
怖くて。
必死で。


涙の味がした。






ゆっくりと唇を離すと、近すぎる距離で恵くんが私を見ていた。
息を呑んだまま。


(だめ)


頭の片隅で、理性が警鐘を鳴らしている。
どんなに理不尽なことをされても、どんなに自分の想いを伝えたくても、今日まで絶対に声だけは出さなかった。

彼を――大好きな恵くんを、絶対に守りたかったから。



でも。



私じゃない誰かのものになってしまうくらいなら――。

















「……やだ」



掠れた声が、喉からこぼれた。
初めて聞いた、自分の声。


恵くんの目が、大きく見開かれる。


自分の中に、こんな醜いものがあるなんて知らなかった。

昔、五条先生が言っていた言葉が頭をよぎる。



『愛ほど歪んだ呪いはないよ』



恵くんを守るために封じてきたはずのものを、私は今、恵くんを奪われたくないという自分のためだけに解き放った。




ごめんね、恵くん。

こんな最低な私を、許さないで。















「どこにも行かないで……恵くん」











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