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【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第3章 【伏黒恵】君に響くカンパニュラ**


ベッドの上で、恵くんが弾かれたようにこちらを向く。



「……なんで……」



その声には、驚きと焦りと。
信じられないものを見たような響きが混じっていた。


違うの。
虎杖くんに頼まれて。
ご飯を渡そうとして。
具合が悪いのかと思って。

そう伝えたいのに、こんな時に限ってノートを持ってきていない。


顔が熱い。
心臓がうるさい。
今すぐにでも、ここから逃げ出したい。

でも、それ以上に。
さっきの恵くんの声が耳から離れない。



『……っ、……好きだ、……っ』



恵くん。
さっきの「好き」は、誰に向けたものだったの。


恵くんは身体を起こして、慌てて身なりを整える。



「……っ、これは」



恵くんが、何かを言おうとしている。

やだ。
聞きたくない。

さっきの好きの意味を。
恵くんの口から聞いてしまったら、きっと耐えられない。


私は落ちたコンビニ袋もTシャツも拾わないまま、急いで部屋を出ようとした。



「待てって」



けれど、手首を掴まれる。
振り返ると、すぐそこに恵くんがいた。

暗い部屋の中でも分かるくらい、恵くんの顔はひどく焦っている。



「話、聞け」



話。
話って、何?

沙耶香ちゃんと付き合うことになったってこと?
恵くんも、沙耶香ちゃんのこと好きだったこと?
今日、本当はそのために会っていたってこと?

それを、恵くんの口から聞かなきゃいけないの?


そんなの、やだ。
やだよ。

掴まれた手を振りほどこうとしたが、びくともしなかった。



「」



名前を呼ばれるだけで、胸の奥がぎゅっと掴まれる。


名前を呼ぶその声が、優しくて。
苦しくて。
今にも泣き出しそうなくらい、好きで。


だめ。
そんな声で呼ばないで。

まだ私にも何か言ってくれるんじゃないかって、馬鹿みたいに思ってしまう。

私は掴まれていない方の手で、恵くんの胸を押した。



「おい、暴れんな」



離して。
行かせて。



「っ!」



聞きたくない。

言わないで。
聞かせないで。
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