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【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第3章 【伏黒恵】君に響くカンパニュラ**


男子寮の廊下は、普段よりずっと静まり返っていた。
先輩たちは任務に出ているのか、人の気配がほとんどない。


本当は、女子が男子寮に入るのはあまりよくない。
分かっている。
分かっているけれど。


私は恵くんの部屋の前に立ち、ぎゅっと手の中のコンビニ袋とTシャツを抱え直した。


(先に、連絡してから来た方がよかったかな……)


そう思ってスマホを取り出そうとしたけれど、手が止まる。

もし連絡して「来るな」って言われたら……立ち直れないかも。
それに、もう沙耶香ちゃんという彼女がいるのに、私が夜に部屋へ行くなんて、本当は迷惑なんじゃないか。


(渡すだけ、渡すだけ。渡したらすぐ帰ろう)


自分にそう言い聞かせて、小さく息を吐き出す。
震えそうになる手を伸ばして、控えめにドアをノックした。


コン、コン。


返事はない。

もう一度、叩いてみる。
けれど、部屋の中からは何の音も聞こえてこなかった。


(寝ちゃってるのかな……)


それなら、ドアノブに袋を下げて帰ろう。
そう思って踵を返そうとした瞬間、虎杖くんの言葉が頭をよぎった。



『あいつ、夕飯も食べてねーからさ』
『風邪っぽいからって』



まさか。


(もしかして、高熱で倒れてるとか……!?)


その想像に行き着いた途端、「迷惑かもしれない」なんていう迷いは一瞬で吹き飛んで、咄嗟にドアノブに手を伸ばしていた。

ノブを回すと、抵抗なくドアが開く。


あれ、開いてる……。
鍵をかける余裕もないくらい、体調が悪いってこと!?


(……お邪魔します)


心の中でそっと唱えて、私は音を立てないように部屋の中へ入った。
部屋の中は、カーテンが引かれていて真っ暗だった。


ベッドの上に、横向きになった恵くんの背中が見える。
掛け布団にくるまるようにして、少し身体を丸めていた。

けれど、ただ眠っているわけじゃない。
シーツが揺れて、モゾモゾと動いている。


(よかった、倒れてはいないみたい……)


ほっとしたのも束の間、低く掠れた息遣いが耳に届いた。
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