第3章 【伏黒恵】君に響くカンパニュラ**
(おにぎり……?)
首を傾げながらそれを受け取ると、虎杖くんはガシガシと自分のピンクオレンジ色の髪を掻いた。
「なんか伏黒、帰ってきてからずっと部屋から出てこなくてさ。『風邪っぽいから』って」
「俺が看病しようかって言っても、『一人にしろ』って中に入れてくれねーんだよ。あいつ、夕飯も食べてねーし」
……風邪?
夕方までは、元気そうにみえたけど。
「、これ渡すついでに伏黒の様子、見てきてくんね? なら伏黒と付き合い長いし、あいつもお前なら文句言わねーだろ」
付き合いが長い。
その言葉は、今の私には胸に刺さった。
虎杖くんはきっと、何の意味もなく言っただけなのに。
それに、もう恵くんには沙耶香ちゃんという『彼女』がいるのに。
私が世話を焼く理由なんて、もうどこにもない。
だけど。
(恵くん、大丈夫かな……)
恵くんが部屋に引きこもってご飯も食べていないと聞けば、放っておけるわけがなかった。
心配で心配で、どうしようもない。
私がこくりと頷くと、虎杖くんは「サンキュー、頼んだ」と言って手を振って去っていった。
虎杖くんの背中が帰るまで見届け、ドアを閉める。
私は手の中のコンビニ袋を見つめた。
それから、ベッドの上に置いた白いTシャツを見る。
(……これを返すついでなら)
ただの幼馴染として、少しだけ顔を見るくらいなら。
許されるだろうか。
私はTシャツをそっと畳んだ。
コンビニ袋と一緒に胸に抱えて、恵くんの部屋へ向かった。