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【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第3章 【伏黒恵】君に響くカンパニュラ**


恵くん。
行かないで。

誰かの隣に行かないで。
私の知らない場所で、笑わないで。

お願い。
私を見て。


そんな、醜くて身勝手な言葉が、胸の奥から次々に溢れてくる。

止めたいのに、止まらない。
涙も勝手にこぼれて、枕を濡らしていた。


好き。
好きなの。
恵くんが好き。


でも、その言葉は結局、どこにも届いていない。

ノートにも書けなくて。
声にもできなくて。

ただ、胸の中で何度も何度も繰り返しているだけ。


もし。
もし、あの時。
倉庫で、最後の一文字から逃げずに書けていたら。

『すし』なんて誤魔化さずに。
ちゃんと『好き』って、書けていたら。


何か、変わっていたのかな。


そんなことを考えたって、もう遅い。
恵くんは沙耶香ちゃんの隣に行ってしまったんだから。
私には、何も言う資格なんてない。


ぎゅっとTシャツを抱きしめると、コン、コンと部屋のドアが鳴った。


こんな時間に、誰だろう。

野薔薇ちゃん?
それとも――。


けれど、ドアの向こうから聞こえてきたのは、思っていた声とは違った。



「ー、いるー?」



虎杖くんだ。

ごしごしと乱暴に目元の涙を拭った。
数回深呼吸をして、泣いていたことがバレないように、そっとドアノブを回す。

カチャリと少しだけ開けたドアの隙間から、廊下の明るい光が差し込んだ。



「お。ごめん、暗いけど……寝てた?」



私の部屋が真っ暗なことにびっくりしたのか目を丸くして、虎杖くんが小声で聞いてくる。
私は、ふるふると首を振った。

虎杖くんは「そっか、ならよかった」とほっとした顔をしてから、少し困ったように眉を下げた。



「あのさ、悪いんだけど……伏黒にこれ、渡してくんねーかな」



そう言って差し出されたコンビニの袋には、おにぎりやゼリー、スポーツドリンクが入っていた。
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