第3章 【伏黒恵】君に響くカンパニュラ**
「ハァ、ハァ……っ! あっちの交差点で、女の子と腕組んで一緒に歩いてるの見た!」
「はぁあ!? あの伏黒が!?」
野薔薇ちゃんが、信じられないものを見るように目をひん剥く。
「――悠仁、野薔薇」
突然、五条先生の声が一段低くなった。
見ると、先生はアイマスクの端に指をかけ、口元にニヤリと底知れぬ危険な笑みを浮かべている。
「フォーメーションBっ!!」
その一声で。
野薔薇ちゃんと虎杖くんが、一瞬にして鋭い顔つきに変わった。
「「承知!!」」
ズザァァァッ!!!
まるで息の合った軍隊のような、完璧なシンクロ。
次の瞬間、三人はものすごい土煙を上げて、虎杖くんが指差した交差点の方向へと猛ダッシュで駆け出していった。
あとに残されたのは、ロータリーを吹き抜ける風と、呆然と立ち尽くす私だけ。
(……え?)
フォーメーションBって、何!?
ていうか、私、置いてけぼり!?
(待って……)
みんなの後を追いかけようとしたが、足が止まった。
恵くんに……彼女。
見たくない。
でも、見なかったらもっと怖い。
私の知らないところで、恵くんが誰かのものになっていくなんて、もっと嫌だ。
ぎゅっとカバンの紐を握りしめる。
逃げちゃだめ。
ちゃんと、自分の目で確かめなきゃ。
そう自分に言い聞かせて、私は三人が走っていった交差点へ向かって足を踏み出した。
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息を切らして、ようやく三人の背中に追いついた私の目に飛び込んできたのは……あまりにもカオスな光景だった。
「伏黒きゅーん! 何よ、その女! 私の瞳に乾杯した夜を忘れたの?」
「俺といる時が一番楽しいって、あれはウソだったの?」
恵くんの両腕には野薔薇ちゃんと虎杖くんが左右からがっしりと抱きついて、その動きを完全に封じていた。
「何? マジで何?」
恵くんは本気で鬱陶しそうに身をよじっているけれど、二人は絶対に離すまいと必死にしがみついている。
そして、そんな恵くんの正面には――。