第3章 【伏黒恵】君に響くカンパニュラ**
「ま、野薔薇から聞いた時点で、僕もだいぶ面白……じゃなくて、心配してたんだけどね」
先生。
今、絶対に「面白い」って言おうとしたよね。
五条先生が、やれやれというように大袈裟に肩をすくめた。
「恵に聞いても、そっけないしさー。『いつも通りです』『別に何もないです』ばっかりで、ちっとも面白くないの!」
やっぱり、面白がってる……。
野薔薇ちゃんも誤魔化すのをやめて、ビシッと私を指差した。
「あんたたち、あれからよそよそしいっちゃありゃしないのよ! 見てるこっちが息詰まりそうなんだから!」
やっぱり、周りから見ても分かるくらいだったんだ。
自分でも分かっていた。
恵くんとの間に、前みたいな空気が流れていないことくらい。
でも、人に言われると。
それが本当のことみたいに形を持って、胸の奥に落ちてくる。
五条先生が顔の横で両手の指をうねうねと怪しく動かしながら、さらに顔を近づけてきた。
「ほらほら、このGTGに、何があったかぜーんぶ話してごらーん? 僕がバッチリ解決してあげるからさ!」
うーん。
昔から、五条先生がこういうふうに言う時は怪しい。
アドバイスが、だいたい規格外なんだもん。
じり、と一歩後ずさると、五条先生は距離を詰めてきた。
野薔薇ちゃんも、逃がす気のない顔をしている。
このままじゃ、本当に全部聞き出される。
そう思った、その時だった。
「先生ェーーッ!! 釘崎ィーーッ!! ーーーッ!!」
ロータリーの向こうから、ものすごい大声が響き渡った。
全員がびくっとして声のした方へ振り向くと。
そこには、コンビニの袋を握りしめた虎杖くんが、ものすごい勢いでこちらへ猛ダッシュしてくる姿が見えた。
そして、虎杖くんは私たちの前で急ブレーキをかけ、肩で息をしながら叫んだ。
「ふ、伏黒に……っ、彼女、いるーーーッ!!!」