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【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第3章 【伏黒恵】君に響くカンパニュラ**


「……そんな顔すんな」



不意に、恵くんが言った。


そんな顔。
どんな顔をしていたんだろう。

恵くんはタオルで濡れた手や体を拭きながら、私を見ないまま続けた。



「お前のせいじゃない」



その言葉に、胸の奥がぎゅっと痛む。

違う。
私のせいだよ。
せっかくのお出かけだったのに。
面倒だって、本当は思ってるでしょ。


恵くんはそれ以上何も言わず、洗い終えたシャツを両手でぎゅっと絞った。
ぽたぽたと水が落ちる。
それから、濡れたシャツを広げて、ぱん、ぱんと軽く振った。


まだ完全には落ちていないオレンジ色の染み。
恵くんの肌に直接当たる太陽の光。

それを見ているだけで、また胸が苦しくなる。


私はノートを開き、ペンを走らせた。



『コンビニで代わりのTシャツ買ってくるね』



書き終えるなり、ノートを恵くんに見せる。
そして返事を待たずに、カバンを抱えて駆け出そうとすると、手首を掴まれた。

驚いて振り向くと、恵くんが私をじっと見ている。



「それより……さっきの奴らと、何があった?」



何もない。
大丈夫。

そう伝えたくて、私は首を横に振った。



「嘘つくな。何もなかった顔じゃねえだろ」



私の手首を掴む恵くんの手に、ぐっと強い力がこもる。



「……俺には、ちゃんと話せ」



俺には。
……そんなふうに、言わないで。

「同情だ」って思い知らされて、諦めようとしたばかりなのに。
また、馬鹿みたいに勘違いしちゃうじゃない。


私はぎゅっと唇を噛み締めながら、必死に自分に言い聞かせる。

スマホを弁償することになったから。
どうして揉めていたのか、その原因をちゃんと聞いておきたいだけなんだ。
いつも世話を焼いてくれている、幼馴染として。
家族としての責任として。


そうやって頭の中で冷たい理由を並べて、高鳴りそうになる心臓を押さえつける。


私は、掴まれた手首をそっと引いて解いてもらうと、真っ白なページにまたペンを走らせた。
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