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【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第3章 【伏黒恵】君に響くカンパニュラ**


公園の端にある手洗い場に着くと、恵くんは躊躇うことなく汚れたシャツの裾を掴み、そのまま頭からすっぽりと脱いだ。


(えっ……)


露わになった上半身。
私の目は、吸い寄せられるようにその姿に釘付けになってしまった。

広い肩幅に、引き締まった背中。
無駄な脂肪なんて一つもない、しなやかで逞しい筋肉。

昔は、私と背丈も変わらなかったのに。
いつの間にか、私なんかよりずっと大きくて、強くなっていた。

それは、彼が『呪術師』という危険な世界で、ずっと戦い続けてきた証で。
ただの幼馴染じゃない、一人の「男の人」なんだって、嫌でも思い知らされてしまう。


見ちゃいけない。
そう思うのに、視線を外すことができなかった。


恵くんが蛇口をひねると、冷たい水が勢いよく流れ出す。
その水でシャツを洗うたびに、腕の筋肉が滑らかに動いて。
水飛沫を浴びた肌が、夏の光を反射している。


(……ばか。私、何見てるの)


心臓がさっきとは別の理由でうるさく鳴り始めて、顔に熱が集まっていくのが分かった。


同情されてるって、思い知らされたばかりなのに。
身の程知らずだって、痛いほど分かったのに。

こんな時でも、恵くんの姿にドキドキしてしまう自分が情けない。


カバンからハンドタオルを取り出して、視線をできるだけ逸らしたまま、恵くんに差し出す。

恵くんは濡れたシャツを水で流しながら、タオルを受け取った。



「悪い。あとで洗って返す」



私はぶんぶんと首を振る。


そんなこと、どうでもいい。
今はただ、少しでも何かしたかった。
ごめんねの代わりを、せめてこのタオルに乗せるみたいに。
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