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【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第3章 【伏黒恵】君に響くカンパニュラ**


これは、ただの筆談用のノートじゃないのに。

恵くんが私のために選んでくれて。
これから、大事な言葉を少しずつ書いていくはずだったノートなのに。


それに、人の連絡先を勝手に教えちゃいけない。
でも、教えたくない一番の理由は――。



沙耶香ちゃんが恵くんに連絡するのも。
恵くんが沙耶香ちゃんに返事をするのも。
二人が私の知らないところで話すのも。


(そんなの、絶対やだ)


私はふるふると首を振った。


書けない。
そんなの、書けるわけがない。
教えられない。
教えたくない。

その意思だけは、どうしても曲げられなかった。



『教えたくない』



私が書いた文字を見た瞬間、沙耶香ちゃんたちの顔から笑顔が消える。



「……はぁ?」



隣にいた女の子たちも、冷ややかな目で私を睨みつけた。



「ありえないんだけど。ちょっと連絡先聞いただけじゃん」

「てか、何様なの?」



冷たい言葉が、次々と降ってくる。

だけど、これでいい。
恵くんだって、勝手に自分の連絡先を教えられたら嫌なはずだ。


沙耶香ちゃんはしばらく私を見下ろしていたけれど、ふっと息を吐く。



「……まぁ、いいけど」



そう言うと、沙耶香ちゃんは何の断りもなく、私の隣に腰を下ろした。
ベンチが、ぎしりと小さく鳴る。



「じゃあ代わりにさ……伏黒くんが中学の時に言ってたこと、教えてあげようか」



恵くんが、言っていたこと?
何それ……初めて聞いた。



「私ね、昔、伏黒くんに聞いたことあるんだよね。なんでいつも、さんと一緒にいるの? って」

「そしたら伏黒くん、何て言ったと思う?」



沙耶香ちゃんは足を組み、私の顔を横から覗き込むようにして笑った。
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