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【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第3章 【伏黒恵】君に響くカンパニュラ**


「そりゃ、わかるだろ。毎日使ってんの見てるし」



それは、たぶん恵くんにとっては何でもないことなのだと思う。
でも私には、恵くんがずっと私を見ていてくれたみたいで。
その事実だけで、胸がいっぱいになる。



「これでいいか」



こくりと頷くと、恵くんはそのノートを持ってレジへ向かおうとした。


(あ、待って)


私は恵くんの袖を掴む。
自分で買うよ、とノートに書こうとした私より先に、恵くんがぼそっと言った。



「……俺が買いたいんだよ」



私の返事を待たずに、恵くんは背を向けてしまった。

レジで財布を出す恵くんの背中を見つめながら、私はその場に立ち尽くしていた。
さっきの恵くんの言葉を、何度も頭の中で繰り返しながら。






「ほら」



会計を済ませた恵くんが戻ってきて、ノートが入った紙袋を私に差し出した。

白い紙袋の中には、さっき恵くんが選んでくれたカンパニュラのノート。
新しい、私の言葉を置く場所。


紙袋を大事に抱えながら、片手を自分の胸元に当てて二回、軽く叩いた。


『ありがとう』


声にできない私が、何度も恵くんに伝えてきた合図。
でも、今は一回だけじゃ足りない気がして。


もう一度。
とん、とん。

それでも足りなくて、もう一度。
とん、とん。


何度も胸元を叩いていると、恵くんは少し呆れたように眉を寄せる。



「そんなに何回もやらなくても、伝わってる」



そう言って、恵くんは先に歩き出した。
けれど、数歩進んだところでふと足を止めた。



「……次も、俺が買ってやるから」

「だから……一人で買いに行ったりすんなよ」



え……次も。
それって――。


胸がきゅぅっと締め付けられて、私は紙袋を抱きしめた。


そんなことを言われたら。
私、また期待しちゃうよ。

ただの家族でも。
幼馴染でもない何かを、望んでもいいのかもしれないって。


あの時、書けなかった最後の一文字が小さく疼く。


ノートに書く文字なんかじゃ、もう全然足りない。


前を歩く大きな背中に飛びついて。
今すぐ、私自身の声で伝えたくなってしまう。



声を出したらだめだって、誰よりも私が一番わかっているのに。















恵くん。


大好き――。






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