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【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第3章 【伏黒恵】君に響くカンパニュラ**


「……別に。いつもと違ったから」



ぶっきらぼうな声。
けれど、私から目を逸らしたまま、恵くんが小さく付け足した。






「……似合ってる」



そのたった一言で、私の心臓は一気に跳ね上がり、顔中が沸騰したように熱くなった。

野薔薇ちゃん、ありがとう。
私、今すごく幸せです。



「……行くぞ」



そう言って、恵くんが早足で歩き出す。
私は嬉しさで胸をいっぱいにしながら、その大きな背中を追いかけた。








(あれ? りっぱずし、こっちだっけ?)


てっきり、そのままお寿司屋さんに向かうのだと思っていた。
でも、恵くんの足は、繁華街とは逆の、少し古びた商店街へ向かっていた。

不思議に思って首を傾げていると、前を歩いていた恵くんが振り返った。



「寿司の前に、少し寄りたいところがある」



そう言って連れてこられたのは、商店街の隅にある、小さな古い文房具屋さんだった。


(何か買うのかな……?)


そう思いながら、カランと鳴るドアベルの音と共に店内へ入る。


古い木製の棚。
紙とインクの匂い。
どこか懐かしい空気に包まれた瞬間、ずっと昔の記憶が蘇った。




――やっと読み書きができるようになった頃。
私の筆談用のノートを買おうと、五条先生に連れられてみんなで文房具屋さんに行った。



『絶対これがいいって! ほら、キラキラしてて超イケてる! 、今の時代はギャルだよ、ギャル!』



五条先生が得意げに差し出してきたのは、ラインストーンがギラギラにデコレーションされた、ショッキングピンクの派手なノートだった。

す、すごい。
目が眩しい……。


私が戸惑っていると、隣にいた恵くんが即座に却下した。



『それはないだろ……』

『えー? 可愛いじゃん。もこういうの持ったらテンション上がるって』

『上がる前に困ってる』



津美紀ちゃんが二人のやりとりにくすくす笑いながら、私の前に淡い色のノートを何冊か並べてくれた。



『ちゃん、好きなの選んでいいんだよ』



好きなの。

そう言われても、私はなかなか手を伸ばせなかった。
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