第3章 【伏黒恵】君に響くカンパニュラ**
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(服が決まらない……)
私はベッドの上に倒れ込んだ。
目の前には、クローゼットから引っ張り出した服が山のように積み上がっている。
白いワンピース。
淡いピンクのカーディガン。
少し大人っぽいブラウス。
いつもより短めのスカート。
いや、これはさすがに意識しすぎ?
でも、少しは可愛く見られたい。
だって今日は――恵くんと二人で出かける日なのだから。
『週末、二人で出かけないか。寿司、食べに行こう』
深夜に届いたメッセージを思い出すだけで、また顔がカーッと熱くなる。
ただ、お寿司を食べに行くだけ。
そう。
ただの、お寿司。
本当は『好き』って書きたかったのに、最後の一文字から逃げて『すし』と書いた。
それなのに。
まさか、あんな誤魔化しから、二人で出かけることになるなんて……!
二人で。
二人で……。
その言葉を頭の中で反芻するだけで、どうしても顔がにやけてしまう。
枕に顔を擦り付けながら、ベッドの上をごろごろと転がった。
嬉しい。
嬉しすぎる。
だって、恵くんと二人きりで出かけるなんて、いつぶりだろう。
昔は、津美紀ちゃんと三人で買い物に行ったり、五条先生に連れられてみんなで出かけたりすることはあった。
でも、二人だけでどこかへ行くなんて、高専に入ってからはそんな機会もすっかり減っていた。
任務とか訓練とか、みんなと一緒にいる時間ばかりで。
恵くんの隣にいることは多いのに、二人だけの時間は思っていたより少ない。
だから、ただのお寿司でも。
私にとっては、心臓が壊れそうなくらい特別だった。
ベッドの上に広がった服をもう一度見る。
期待はしちゃだめだ。
恵くんはただ単に「寿司を食べに行く」くらいのつもりだろう。
「お前、何張り切ってんだ」なんて引かれるのも嫌。
でも、いつも通りすぎても嫌。
つまり、全然決まらない。
(どうしよう……!)
ベッドの上で服の山に埋もれ、頭を抱えていると、突然勢いよく部屋の扉が開いた。
「ちょっと! 洗顔貸して……って、うわ」
部屋に入ってきた野薔薇ちゃんは、うずたかく積まれた服の山と、その中心で頭を抱えている私を見て、ピタリと動きを止める。