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【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第3章 【伏黒恵】君に響くカンパニュラ**


***



(服が決まらない……)


私はベッドの上に倒れ込んだ。
目の前には、クローゼットから引っ張り出した服が山のように積み上がっている。


白いワンピース。
淡いピンクのカーディガン。
少し大人っぽいブラウス。
いつもより短めのスカート。

いや、これはさすがに意識しすぎ?

でも、少しは可愛く見られたい。
だって今日は――恵くんと二人で出かける日なのだから。



『週末、二人で出かけないか。寿司、食べに行こう』



深夜に届いたメッセージを思い出すだけで、また顔がカーッと熱くなる。


ただ、お寿司を食べに行くだけ。

そう。
ただの、お寿司。


本当は『好き』って書きたかったのに、最後の一文字から逃げて『すし』と書いた。

それなのに。
まさか、あんな誤魔化しから、二人で出かけることになるなんて……!


二人で。
二人で……。


その言葉を頭の中で反芻するだけで、どうしても顔がにやけてしまう。
枕に顔を擦り付けながら、ベッドの上をごろごろと転がった。


嬉しい。
嬉しすぎる。

だって、恵くんと二人きりで出かけるなんて、いつぶりだろう。

昔は、津美紀ちゃんと三人で買い物に行ったり、五条先生に連れられてみんなで出かけたりすることはあった。

でも、二人だけでどこかへ行くなんて、高専に入ってからはそんな機会もすっかり減っていた。
任務とか訓練とか、みんなと一緒にいる時間ばかりで。

恵くんの隣にいることは多いのに、二人だけの時間は思っていたより少ない。


だから、ただのお寿司でも。
私にとっては、心臓が壊れそうなくらい特別だった。


ベッドの上に広がった服をもう一度見る。
期待はしちゃだめだ。
恵くんはただ単に「寿司を食べに行く」くらいのつもりだろう。


「お前、何張り切ってんだ」なんて引かれるのも嫌。
でも、いつも通りすぎても嫌。

つまり、全然決まらない。


(どうしよう……!)


ベッドの上で服の山に埋もれ、頭を抱えていると、突然勢いよく部屋の扉が開いた。



「ちょっと! 洗顔貸して……って、うわ」



部屋に入ってきた野薔薇ちゃんは、うずたかく積まれた服の山と、その中心で頭を抱えている私を見て、ピタリと動きを止める。
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