第3章 【伏黒恵】君に響くカンパニュラ**
『週末、二人で出かけないか。寿司、食べに行こう』
送信ボタンを押すと、画面に緑色の吹き出しが浮かび上がった。
二人で……。
文字にすると、やばいな。
、本当は何を書こうとした。
あの『す』の続きが、本当に俺の都合のいい期待通りなのか。
確かめたいのに、怖い。
だから俺は、『すし』に乗っかった。
画面を伏せ、目を閉じようとした、その時。
ブッとスマホが短く震えた。
時刻は深夜を回っている。
いつもなら、はとっくに寝ているはずの時間だ。
跳ね上がりそうになる心臓を抑えながら、俺は急いでスマホの画面を表に返した。
そこには、俺がたった今送ったばかりのメッセージについた『既読』の文字と、新しい吹き出し。
『うん! 絶対行く!』
それに続いて、パタパタと尻尾を振って喜ぶ、白い犬のスタンプが送られてくる。
あまりに勢いのある返事に、思わず画面を見つめたまま固まった。
……絶対、って。
そんなに食いたかったのか、寿司。
いや、もしかしたら、も……。
こんな夜中でも、すぐに返してくれた。
あいつも今までずっと起きていて、スマホを握りしめていたってことだろうか。
今日、倉庫であったことを思い出して。
俺と同じように、眠れずにいたのかもしれない。
「……落ち着け。ただの返事だろ」
たまらずスマホを額に押し当てた。
画面の向こうにいるが、少しだけ近くなった気がする。
どうしようもない愛おしさと、抑えきれない期待が、じわじわと胸を満たしていった。