第3章 【伏黒恵】君に響くカンパニュラ**
右手を見ると、白濁した液体が指の隙間をドロリと垂れた。
の柔らかさを覚えている手。
が『す』と書いた手。
その手を、自分でひどく汚してしまった気がした。
ベッドの脇からウエットティッシュを数枚引き抜き、汚れた右手を拭き取る。
丸めたティッシュをゴミ箱に放り投げ、もう一度ベッドに寝転がった。
『で、実際どうだったの? 密室で二人きり。当然キスの一つや二つ……いや、ドサクサに紛れて胸くらい揉んじゃったりした?』
『え? 図星!? いやー、僕のナイスアシストに感謝してほしいね』
倉庫から出た直後に、五条先生がニヤニヤと笑いながら耳打ちしてきたデリカシー皆無の言葉が蘇る。
あの時は腕を振り払ったが、内心ではひどく動揺していた。
倉庫に閉じ込められたのは、正直迷惑だった。
でも。
と二人きりになれたことまで、嫌だったわけじゃない。
キスなんてしてない。
できるわけがなかった。
だけど、胸には――触れてしまった。
そして俺は、の顔を思い浮かべながら、一人で欲を吐き出した。
あいつは、家族で。
幼馴染で。
十年間、大事に守ってきた存在だった。
なのに、もうそれだけじゃ済まなくなっている。
こんなことをしている時点で、もうとっくに家族なんかじゃない。
少なくとも、俺の方は。
「……くそ」
あの人の思うままなのは気に入らないが……確かめたい。
もう、誤魔化したくない。
俺は枕元に転がっていたスマホに手を伸ばして、メッセージアプリを開いた。
一番上にある『』のトーク画面をタップし、メッセージを打ち込む。