第3章 【伏黒恵】君に響くカンパニュラ**
「……っ」
を、あいつを思い出しながらこんなことをするなんて。
何やってんだ、俺は。
罪悪感が頭の片隅を掠める。
けれど、それを上回るほどの衝動に俺は支配されていた。
スウェットの紐をほどき、下着ごと下へ引き下げる。
すでに限界まで硬く張り詰めている自身を、きつく握り込んだ。
「……っ、ふ……」
手を動かすたびに、あの時、腕の中で顔を真っ赤にしていたの顔が浮かぶ。
「はっ…………」
自身を扱くこの右手には、まだの柔らかい感触と、彼女がなぞった『す』という文字の軌跡も火傷のように残ったままだ。
「……っ、く……!」
手のひらに残る彼女の痕跡のせいで、触れているのが自分の手なのか、なのか、分からなくなりそうだった。
扱く手が徐々に乱暴に、速くなっていく。
(……っ)
もし、あのまま抱きしめたままだったら。
真っ赤な顔をしたあいつの、小さくて震える唇を塞いでいたら。
想像の中のは、俺から逃げなかった。
それどころか、戸惑いながらも俺の背中にそっと腕を回し、熱を帯びた瞳で俺を見上げてくる。
そして、その形の良い唇が、ゆっくりと開いて――。
『恵くん、好き』
現実のあいつは、声を出せない。
そんなことは、痛いほどわかっている。
それでも。
俺の最低な願望と情欲が作り出した、ひどく都合のいいあいつ。
ありもしないのに、頭の奥が痺れた。
の匂い、柔らかさ、体温。
それらが脳内を完全に埋め尽くした瞬間。
「……っ、……!」
腰が跳ねて、俺はドロドロとした衝動を吐き出した。
荒い呼吸がおさまらなくて、天井をただ見つめることしかできない。