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【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第3章 【伏黒恵】君に響くカンパニュラ**


次の瞬間、私たちは弾かれたように飛び起きた。

私は胸元を隠すように、自分の身体をぎゅっと抱きしめる。
恵くんは私から勢いよく視線を逸らし、片手で自分の顔を覆った。



「………………悪い」



掠れた、小さな声で恵くんが謝った。
恵くんは耳まで真っ赤になっている。
それを見てしまったせいで、私の顔もさらに熱くなった。


これは事故。
でも、漫画と一緒の流れになってしまった。

どうしよう。
恵くんに、胸触られた。
どうしようどうしよう。

恵くんの顔が見られない。
心臓の音がうるさすぎて、狂ってしまいそう。


私は座り込んだまま。
恵くんも少し離れたところで、視線を逸らしたまま。

さっきまで近すぎた距離が、今度は変に遠い。


何か言わなきゃ。
沈黙が気まずい。

そもそも、私がアレを見て驚いたからこうなったわけで。
恵くんは、何一つ悪くない。



『ごめんなさい、私が転んだから』
『気にしないで』



ノートがない今、伝えるには手を動かすしかない。


(えっと、ごめんなさいはこれで、気にしないで、は……)


けれど、頭の中がパニックで、指がちっとも言うことを聞いてくれない。
伝えたい言葉が頭の中でこんがらがって、手が空中で意味不明な動きを繰り返してしまう。


(えっと、そうじゃなくて……っ!)


涙目になりながら指を絡ませていると。



「……落ち着け」



顔を上げると、恵くんが少し距離を詰めて、私の隣に座り直していた。


そして、私の目の前に、すっと右手を差し出す。
さっき私の胸に触れた手のひらを、上に向けて。



「……ここに書け。俺の手のひらに指で書けばわかるから」



それは、声が出せない、ノートもない私を気遣う、彼なりの不器用な優しさだった。
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