• テキストサイズ

【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第3章 【伏黒恵】君に響くカンパニュラ**


私を呪いから救ってくれたのは、五条先生だけど。
私を見つけてくれたのは、恵くんと津美紀ちゃんなんだよ。


あの時、初めて思えたんだ。
暗い場所から出ても、大丈夫なんだって。
この手を握っていれば、怖くないんだって。

ここにいてもいいんだって。
ずっと恵くんたちと一緒にいたいって――。


だから今も。
暗い倉庫の中にいるのに、昔ほど怖くない。
隣に恵くんがいるから。


隣に座る恵くんの手に、自然と目がいく。

あの頃より、ずっと大きい。
指も長くて、骨ばっていて。
もう、子どもの手じゃない。


(また……繋ぎたいな)


気づけば、自分の手が恵くんの方へ動きかけた。


……え。
いま、私、何しようとした?
だめ。
今は、昔とは違う。
小さい頃みたいに、怖いから手を繋いでほしいなんて、簡単に甘えられない。

それに、今の私は――怖いからじゃなくて、ただ恵くんに触れたいだけだ。


そこまで考えてしまって、顔が一気に熱くなる。

これは、昨日あんな漫画を読んだからだ。
だから、変なことばかり考えてしまうんだ。

何か。
何か別のことを考えないと。


キョロキョロと周りを見回す。

薄暗い棚。
積み上げられた木箱。
埃をかぶった訓練用の道具。

その奥で、小さな光が揺れているのが見えた。


(……窓?)


棚の上の方に、小さな窓があった。
人が通れるほどの大きさではないけれど、外の様子は見えるかもしれない。
もし誰かが近くを通れば、気づいてもらえるかもしれない。


私が立ち上がると、恵くんが不思議そうにこちらを見た。



「どうした?」



私は小窓を指差してから、外を見る仕草をした。
それだけで、恵くんには伝わったらしい。



「……誰か通ったら、気づくかもな」



小窓は思っていたより高い場所にあった。
そのままでは届きそうにない。

棚の脇に置かれていた古びた椅子を、小窓の下まで引きずっていく。



「おい、気をつけろよ」



恵くんの声に振り返って、大丈夫と手で伝える。

椅子の上に足をかけた、その時。
視界の端で何か黒いものが動いた。
/ 172ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp