第3章 【伏黒恵】君に響くカンパニュラ**
「倉庫って暗いし埃っぽいし、もし閉じ込められちゃったら危ない危ない」
「……閉じ込められる前提なのがよくわかりませんが」
恵くんがそう言うと、五条先生は軽く肩をすくめた。
「たとえばの話だよ、たとえば。恵だって、が一人で暗い倉庫に閉じ込められたら嫌でしょ?」
「…………」
恵くんは一瞬黙った。
それから、諦めたように深く息を吐く。
「……わかりましたよ。行けばいいんでしょ」
「さっすが恵。話が早い」
恵くんはまだ納得していない顔をしていたけれど、結局、私たちは二人で備品倉庫へ向かうことになった。
訓練場の裏手にある倉庫は、思っていたよりも古かった。
錆びた取っ手を引くと、ぎぃと重たい音を立てて扉が開く。
中は埃っぽく、薄暗い棚の奥には木箱や訓練用の道具が雑然と積まれていた。
私はむせそうになりながら、恵くんの後について中へ入る。
恵くんは手前の箱を、私は奥の棚を確認することにした。
棚の上段に置かれた箱に手を伸ばす。
あと少し。
もう少し。
つま先立ちになって、指先をぷるぷるさせながら頑張ってみたけれど、どうしても届かない。
すると、隣から恵くんの手が伸びて、その箱を軽々と下ろしてくれた。
「……ほら」
私は「ありがとう」と手で伝えて、箱の蓋を開ける。
けれど、中に入っていたのは、探しているものとは別の札束だった。
恵くんがさらに奥の木箱を開けたところで、その手がぴたりと止まる。
「……あった。これだ」
木箱の中から目当ての呪符の束を取り出し、私たちは一緒に出口へ向かおうとした――まさに、その時だった。
バタンッ! と、背後で重たい扉が閉まる音がした。
その直後、外側で何か重いものが扉にぶつかるような、鈍い音が響く。
扉の隙間から差していた細い光が消え、倉庫の中は一瞬にして暗闇に包まれた。