第3章 【伏黒恵】君に響くカンパニュラ**
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動かない扉を睨んだまま、恵くんが低く呟いた。
「……最悪だ。閉じ込められた」
その言葉が、頭の中でゆっくり反響する。
閉じ……込められた?
この倉庫に。
恵くんと、二人で。
……二人で!?
どうしてこんなことになったのか。
話は十分ほど前に遡る。
午後の訓練を終えたばかりの私たちに、五条先生がひらひらと手を振りながら近づいてきた。
「恵、! 悪いんだけど、訓練場の裏にある備品倉庫から次の授業で使う呪符を取ってきてくれない?」
恵くんは一瞬で嫌そうな顔をした。
「……俺たち、この後真希さんに呼ばれてるんですけど」
「大丈夫大丈夫。取ってくるだけなら五分で終わるって」
「先生が自分で行けばいいでしょうが」
「僕はダーメ、今すっごく忙しいから」
そう言いながら、五条先生は持っていたジュースをずずっと吸った。
先生、どこからどう見ても忙しそうには見えないけど……。
「虎杖に頼んでください。さっき暇そうにしてたんで」
「悠仁はダメ」
「なんでですか」
「悠仁には悠仁の大事な仕事があるから」
「何の仕事ですか」
「……僕の代わりに、原宿で期間限定クレープの列に並ぶ仕事?」
「ただのパシリじゃないですか。というか今考えましたよね」
「細かい男はモテないよ、恵」
恵くんの眉間にどんどん皺が寄っていくのが見えて、私は慌ててノートを開いた。
『じゃあ、私が行ってくるよ』
『恵くんは先に真希さんのところに行って』
そう書いて見せると、恵くんがすぐに眉をひそめた。
「お前は一人で行くな」
「そうそう、一人はダメ」
五条先生はにこにこと笑ったまま、私のノートを指差した。