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【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第3章 【伏黒恵】君に響くカンパニュラ**


「〜〜〜〜っ!!」



私は物凄い勢いで本を閉じ、そのままベッドの上に突っ伏した。


用具倉庫だよね!?
誰か来ちゃうよ!

というか、好きって言ったら、すぐにキスをするの?
キスをしたら、その先には……あんなことが待っているの?

野薔薇ちゃんが言っていた「その先の幸せ」って、もしかして、これのことなの!?


(な、ななな、なんてものを貸してくれたの野薔薇ちゃん!!)


『恋愛の教科書』なんて言っていたけれど、刺激が強すぎる。
考えないようにしても、またさっきのシーンが頭に浮かんでしまう。


漫画の後半、二人は何度も唇を重ねていた。


(キスって、どんな感じなんだろう……)


自分の唇に指で触れてみる。
やわらかい。
けれど、それだけだ。


起き上がって、枕元に置いてあるくまのぬいぐるみを両手で持ち上げた。
昔、津美紀ちゃんが「寂しくなったら抱っこして寝るといいよ」とくれたものだ。
少し毛玉ができていて、片耳だけくたっと折れている。


くまの丸い顔を、じっと見つめた。


……確認。
これは、ただの確認だから。


そう自分に言い聞かせて、くまの丸い鼻先にそっと唇を近づけた。

ちゅ、と小さく触れる。



「…………」



うーん。何も。
胸がきゅっとなるわけでも、漫画みたいに世界が変わるわけでもない。
ただ、ぬいぐるみのふわふわした毛が少し唇にくすぐったかっただけだった。

くまをぎゅっと抱きしめて、ベッドに横になる。


(……もし、恵くんだったら?)


ここに、恵くんの唇が触れたら。
漫画の女の子みたいに、胸が苦しくなるのだろうか。


恵くんの大きな手が、私に触れて。
暗闇の中で、二人の息が混ざるくらい顔が近づいて――。

くまを抱きしめているはずなのに、一瞬、腕の中にいるのが恵くんみたいな気がした。



「〜〜〜〜っ!!」



くまのぬいぐるみを放り投げ、再び枕に顔を埋める。
頭の中に浮かんでしまった恵くんを追い出すように、ベッドの上でじたばたした。
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