第3章 【伏黒恵】君に響くカンパニュラ**
「でも、問題はあんたのほうよ、。あんた、伏黒のこと見る時、いっつも泣きそうな顔してんの、知ってる?」
野薔薇ちゃんのその言葉に、私はハッとして視線を落とした。
泣きそうな顔。
私が恵くんを見る時に?
そんなつもりは、少しもなかった。
恵くんの背中を見るたびに怖くなる。
いつか私のせいで、呪いが彼を奪ってしまうかもしれないこと。
それから――――家族以上の気持ちを欲してしまうこと。
それが全部、顔に出てしまっていたのだろうか。
野薔薇ちゃんは「やっぱ気づいてないか」と深く息を吐いた。
「伏黒を家族以上だと思ってなきゃ、あんな顔しないわよ」
「…………っ」
胸の一番痛いところを直接掴まれた気がして、ぎゅっとペンを握りしめる。
「そんな苦しそうな顔するくらいならさ。好きって、伝えちゃえばいいじゃない」
「伏黒だって、絶対にあんたのこと特別に思ってるわよ。どう見ても両思い確定のボーナスステージじゃない」
「声は出せなくても、そのノートに『好き』の二文字書くだけで、全部ハッピーエンドになるわよ」
野薔薇ちゃんは励ますようにカラッと笑ってくれたが、私はふるふると首を振った。
「両思い確定」だなんて言ってくれるけれど、それは違う。
恵くんが私に向ける「特別」は、きっとそういう種類のものじゃない。
恵くんにとって、私は家族だ。
何も知らなかった私に、一から人間の生き方を教えてくれた人。
恵くんが私のそばにいてくれるのは、責任感からだ。
津美紀ちゃんが呪われて、ずっと眠ったままだから。
もう誰かが傷つくところを、見たくないだけなのかもしれない。