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【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第3章 【伏黒恵】君に響くカンパニュラ**


「そもそも、伏黒のどこがいいのよ。あんなの、重油まみれのカモメに火つけたりしそうな顔してるじゃない」



野薔薇ちゃん!?
そんなことない、絶対に違う!

野薔薇ちゃん、恵くんのこと誤解してる!



『恵くんは、絶対にそんなことしないもん!』



力強く、文字の下に三本も線を引いてしまった。
それを野薔薇ちゃんの目の前にバシッと突き出し、人差し指でトントンとページを叩いて猛抗議する。


だって、私は知っている。
恵くんが、不愛想な顔の裏でどれだけ優しい人なのかを。



まだ、五条先生に引き取られて間もなかった頃。
ベッドの感触になれなくて、私はよく床で丸まっていた。

夜になると、理由もわからず怖くなる。
声を上げて泣くこともできなくて、ただ毛布を被って震えていた。

すると、決まって部屋のドアが開いて、恵くんが入ってくるのだ。

涙まみれの私の顔を見ると、彼はいつもあからさまに嫌な顔をして、ちっと舌打ちをした。

怒られる。
そう思ってぎゅっと身をすくませたが、恵くんは何かを小さく呟いて、私の隣にごろんと横になった。

その頃の私には、その言葉の意味はわからなかった。
けれど、彼が私を怒りに来たわけではないことだけは、なんとなくわかった。

私が彼の服の裾をぎゅっと握りしめても、鬱陶しがるどころか、私が眠りにつくまで、絶対にその手を振り払おうとはしなかった。

次の日、硬い床で寝落ちしたせいで体を痛めて、一日中不機嫌そうに首を回していたくせに。



『恵くんは、本当はすごく優しいんだよ。すっごくだよ!』



私がさらにそう書き足して、むんっと少し頬を膨らませて見上げると、野薔薇ちゃんは降参したように両手を上げた。



「あー、わかったわかった。わかったから、そんな健気な小動物みたいな目で私を見るのやめなさい。私が悪役みたいでやりづらいわ」

「まあ、百歩譲って伏黒のほうは『無自覚な重い男』ってことにしてあげるわ」
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