• テキストサイズ

【H×H イルミ】黒と白のアリア

第10章 霧の屋敷の裏側


朝のゾルディック家は、珍しくざわめきに満ちていた。

正面玄関の石畳では、使用人たちが慌ただしく馬車の準備を進めていた。革の軋む音、馬の蹄鉄が石を打つ響きが、冷えた朝の空気に長く尾を引く。

その様子をシルバ・ゾルディックは外套を羽織りながら静かに見下ろしていた。今日は街での定期視察と幾つかの商談がある。半日ほど屋敷を空ける予定だ。

「お父さん、どこへ行くの?」

広間へ駆け込んできたキルアが、ぱっと顔を上げた。

「街だ」

「街!? オレも行きたい!」

シルバは口元をわずかに緩めた。

「キル。一緒に行くか」

「やりー!」

銀髪を揺らしながらキルアは飛び跳ねる。

その様子を横目に、シルバは少し離れた場所に立つ長男へ視線を移した。

「イルミ。たまにはお前もどうだ?」

イルミは一瞬だけ長い睫毛を上げたが、すぐに興味を失ったように目を逸らす。

「……いいよ、俺は。そろそろ曲書きたいから」

いつになく素っ気ない返事だ。

シルバは特に気を悪くした様子もなく、ただ静かに頷いた。

近頃、長男が自分を避けていることなどとうに気づいていた。
それでも敢えて声を掛けたのだった。

「そうか」

短く返したところで、奥のソファへ腰掛けていたキキョウがゆったりと口を開く。

「貴方。カルトはまだ長時間の馬車移動は難しいですわ」

その腕の中で、幼いカルトが母親の胸に凭れかかり、うとうとと目を細めている。

「わたくしたちは留守番をいたします」

「悪いが任せたぞ」

シルバが低く言うと、キキョウは優雅に微笑んだ。
/ 199ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp