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【H×H イルミ】黒と白のアリア

第25章 帰着



「ところで、お二人については、公演以外にもずいぶんと話題がございますね」

一人の記者が、さりげなく話題を変えた。
エレオノーラは微笑んだまま、その男を見た。

「そうなのですか?」

「ええ。王都では、先生と殿下が大変親しい間柄にあるのではないかと、もっぱらの噂でございます」

周囲から、控えめな笑い声が漏れた。

「先日も、お二人が並んでいらっしゃる挿絵が掲載されておりました。ご覧になりましたか?」

「ええ。拝見いたしましたわ」

「いかがでした?」

「私より、ずっと美しく描いていただいたようです」

記者たちが笑った。

「そんなことはございません。殿下のお美しさには、絵筆も及びますまい」

「まあ。お上手ですこと」

エレオノーラは扇子を口元へ寄せた。
その様子を見て、記者たちはますます勢いづいた。

「しかし、先生と殿下は、制作中もお二人で過ごされることが多かったと伺っております」

「公演準備のためですわ」

「それだけでございましょうか?」

エレオノーラは答えなかった。
代わりに、もう一度微笑んだ。

「ゾルディック先生、いかがです?」

記者がイルミへ向き直る。エレオノーラも扇子の陰で、わずかにそちらを向く。

「お二人は、特別親しい間柄にあるのでしょうか」

「そのような事実はありません」

あまりにもあっさりした返事に、扇子を持つ指にわずかに力が込もった。

「では、現在お二人の間に婚約などのお話は?」

「その予定はありません」

「将来的にも?」

「そのような噂は大変光栄ですが、僕と殿下ではそういったことになる可能性は100%あり得ません」

扇子の陰で、エレオノーラの微笑みが一瞬止まった。

「……ですが」

記者がなおも食い下がる。明確な否定は、かえって興味を引いたらしい。
エレオノーラは、そっと扇子を持ち直した。

「しかし先生、これほどお美しい王女殿下と、何か月もご一緒に過ごされていたわけですから」

「それが仕事ですので」

「おやおや、ずいぶんとお堅い」

再び笑いが起こった。
エレオノーラも口元をほころばせた。記者の一人と目が合うと、軽く頷いてみせる。
誰もが楽しそうだった。つい先ほど、彼が何と言ったのか。まるで聞こえていなかったかのように。
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