第25章 帰着
「では、殿下ご自身はいかがでしょう?」
記者の一人が、再びエレオノーラへ向き直った。
「先生のことを、どのように思っていらっしゃいますか?」
「大変尊敬しておりますわ」
「音楽家として、でございますか?」
「もちろんです」
「それだけでしょうか?」
エレオノーラは扇子の向こうで微笑んだ。
「皆様は、ずいぶんと先生にご興味がおありなのね」
「いえいえ、我々が興味を持っておりますのは、お二人のことでございますよ」
周囲から、また笑い声が上がった。いつまで続くのだろう、エレオノーラは会場へ視線を逃した。
誰も、その質問を無礼だとは思っていないらしい。そればかりか、少し離れたところでは貴族たちもが楽しげにこちらを眺めている。その向こうに、父である王の姿があった。
ルドルフは数人の大臣と話していたが、記者たちの声が聞こえたのか、こちらへ顔を向けた。
「陛下!」
記者の一人が、すかさず声をかけた。
「王女殿下とゾルディック先生のお噂について、陛下はどのようにお考えでしょうか?」
エレオノーラは、思わず父を見た。
ルドルフは一瞬だけ目を丸くしたが、すぐに愉快そうに笑った。
「ははは。若者同士のことだ。父親があまり口を挟むものでもあるまい」
周囲がどっと沸いた。
「では、陛下も温かく見守っていらっしゃると?」
「さて、どうかな」
また笑い声が上がった。
頬がこわばっていく。いつまで微笑んでいればいいのだろう。
ルドルフは豊かな口髭の下に笑みを浮かべたまま、杯を持ち上げた。
「今夜はせっかくの祝いの席だ。皆も大いに楽しんでくれたまえ」
それ以上は答えず、再び大臣たちとの会話へ戻っていく。それでも記者たちは満足そうだった。
「これは明日の新聞が楽しみですな」
「陛下のお言葉もいただけましたし」
「王都の皆様も、さぞお喜びになるでしょう」