第24章 別離
「まあまあ、なんて素敵なのかしら!」
いつの間にか居間に来ていたキキョウが、テーブルいっぱいの贈り物を眺めていた。
「せっかくですもの、みんなでティータイムにしましょう!」
キキョウが執事に声をかけると、ほどなく茶器の支度が始まった。
白いクロスが広げられ、磨かれた銀の匙が並べられる。菓子皿には薄い焼き菓子が重ねられ、小さなガラスの器には果物の砂糖漬けが盛られた。
「そうですね! ミルキさん、今日はたくさん召し上がってくださいね。いつもお菓子をいただいてばかりですから」
「じゃ、遠慮なく」
ミルキはさっそく別の箱に手を伸ばした。
「おお、これは珍しい茶葉じゃな」
奥から現れたゼノが、一つの缶を手に取った。蓋を開け、茶葉の香りを確かめる。
「ふむ。なかなかよい香りじゃ」
「お義父様も、ぜひ召し上がってくださいな」
「そうじゃな」
ゼノは満足そうに頷き、いつもの椅子に腰を下ろした。
執事が湯を注ぐと、温かな茶の香りが居間に広がっていく。
ニナはミルキが菓子を口に運ぶ様子を嬉しそうに眺めていたが、ふと思い出したように口を開いた。
「あ、そうだ。ミルキさん」
「ん?」
「ちょっと、見ていただきたいものがあるんです」
「何?」
ニナは窓際のチェストへ向かった。
その引き出しには、裁縫道具がしまってあった。色ごとに巻かれた刺繍糸や、小さな鋏、針を刺した布張りの針山。使いかけの白い布は、糸が絡まないように薄紙に挟んである。
ニナはその中から小さな袋を取り出した。
「これなんですけど……」
袋から現れたのは、白いハンカチだった。
隅には、小さなウサギが一匹、銀色の糸で刺繍されている。
耳の片方が少し曲がり、尻尾のあたりには細かな縫い目が重なっていた。
「……何これ?」
「ウサギです」
「いや、分かるけど。なんでウサギ?」
「可愛いと思ったので」
ニナは少し恥ずかしそうに笑った。
「刺繍の練習をしたんです。まだあまり上手ではないんですけど、もしよかったら……」
ミルキは差し出されたハンカチを受け取った。
白い布を広げ裏返し、また表に戻す。