第24章 別離
パチン、パチン。
植木鋏の音が聞こえてくる。
見ると、脚立に登って枝を刈り込むゼブロのそばで、カルトが花壇を覗き込んでいた。
「おや、ニナお嬢様。今日は気持ちのいいお天気ですなあ」
「ええ、本当に」
ゼブロは鋏を休め、にこやかに振り返った。ニナも笑顔で応じると、花壇の前にしゃがんでいるカルトに目を向けた。
「カルト、ゼブロさんのお仕事の邪魔をしちゃダメじゃない」
「僕、母さんに頼まれた。食卓に飾る花を選んでる」
花壇には、秋の小さな花々が咲き始めていた。
夏の間に伸びた草花の間から、白や薄紫の花が顔を覗かせている。花壇の縁にはまだ朝の水やりの跡が残り、湿った土の匂いがした。
「これ、綺麗ね」
ニナが花の一つを覗き込むと、隣に咲いている薄紫の花に小さな白い手が伸びた。
「こっちの方が、色が揃うと思う」
「本当! カルトは上手ね」
二人は花壇の前にしゃがみ込み、花を一本ずつ摘んでいった。
ニナが白い花を選ぶと、カルトはそれに似合う紫の花を探す。長すぎる茎は揃え、傷んだ葉を取り除いていくうちに、二人の手の中に花束ができあがった。
「ねえ、カルト。こっちは、部屋に飾ってもいいかな」
カルトは大きな黒い瞳で、ニナを見上げた。
「でも、すぐに枯れちゃうわね」
カルトは手元の花束に目を落とした。
「また摘めばいい」
「……そうね」
白と淡い紫の花束を胸に抱え、ニナは立ち上がる。空いた方の手を差し出すと、カルトは黙ってその手を握った。
二人は並んで屋敷へ戻った。