第24章 別離
ククルーマウンテンの麓には、子どもたちの笑い声が響いていた。
午後の陽射しは柔らかくなっていたが、庭の芝生にはまだ夏の間に吸い込んだ温もりが残っていた。
木々の梢を渡る風は涼しく、日陰に入ると汗ばんだ頬がひんやりとする。
「キルア、待って!」
「待ったら鬼ごっこにならないだろ」
キルアはそう言うなり、ひょいと植え込みを飛び越えた。
「ずるい!」
「どこが?」
ニナも後を追おうとしたが、スカートの裾が枝に引っかかりそうになり、慌てて足を止めた。
その間にキルアはもうずっと先まで走っている。
「もう、キルア!」
「遅いんだよ、ニナ!」
振り返ったキルアが、得意そうに笑った。
結局、ニナは一度もキルアを捕まえられなかった。
息を切らして大きな木の根元に腰を下ろすと、キルアは涼しい顔で戻ってきた。
「もう終わり?」
「だって、全然捕まらないんだもの」
「当たり前じゃん」
「少しくらい手加減してくれてもいいのに」
「それじゃつまんないだろ」
キルアは隣の芝生に寝転がった。
頭上では、枝いっぱいに茂った葉が風に揺れている。木漏れ日が二人の足元をちらちらと動き、遠くからは時折、庭師が生垣を刈り込んでいる鋏の音が聞こえてきた。
ニナは膝に手を置き、まだ弾んでいる息を整えた。
こうしてキルアと庭を走り回ることも、もうすぐできなくなるのだろう。
「ねえ、キルア。きっと、また遊んでね」
「ん? いいけど」
キルアは何でもないことのように答えた。
「次はもうちょっと速く走れよ」
「無理よ」
「じゃあ、またオレの勝ちだな」
そう言って笑うと、キルアは勢いよく起き上がった。
やがてキルアが屋敷へ戻っていくと、ニナは庭の奥へ向かった。