第23章 喝采のあと
王都は朝から浮かれていた。
鐘が鳴る。通りという通りに旗が掲げられ、建物の窓からは花びらが降ってくる。どこかでは楽隊が演奏している。
街中に焼いた肉と、甘い菓子と、酒の匂いが混じっていた。
「ニナ!」
人混みの向こうからキルアが走ってきた。
両腕いっぱいに、パンや菓子を抱えている。
「見ろよ。めちゃくちゃ配ってる」
「……そんなにもらったの?」
「いいんだって。ほら」
包みを一つ押しつけられた。
開いてみると、チョコレートだった。
「チョコレートまで?」
「あっちにもあるぜ」
キルアが指差した先には長い列ができている。
子どもたちが菓子を受け取り、旗を振りながら走っていた。
昨日まで忙しく仕事をしていた男たちが、朝から酒を飲んでいる。
知らない者同士が肩を叩き合い、女たちは窓から花を撒いていた。
みんな、楽しそうだった。
ニナもなんとなく楽しくなる。
手の中のチョコレートを一口かじると、甘さが口いっぱいに広がった。
「ニナ、あれ見ろよ」
大通りの向こうから音が近づいてくる。
楽隊がやってきた。
ニナは顔を上げた。
聞いたことのある旋律だった。
「あ」
キルアも気づいた。
「これ、兄貴の曲じゃん」
昨日まで、劇場いっぱいに鳴っていた曲だった。
無数の旗が揺れ、その周囲を《花冠の行方》の旋律が満たしている。
今は、ずっと簡単に編曲されている。
太鼓に合わせて歩けるような速さで、明るく鳴っていた。
ニナは小さく、その続きを口ずさみかけた。
知っている。次の音も。その次の音も。
何度も聞いたような、どこか懐かしい旋律だった。