第22章 幕開け
王女が顔を上げる。
もう涙はなかった。
勝利した国の王女としてまっすぐ前を向いていた。
やがて、一人が立った。
拍手が鳴った。
それを合図にしたように、劇場中から音が押し寄せた。
一人、また一人と立ち上がる。
一階席の前方から後方へ。
二階のボックス席へ。
軍人も、貴族も、議員も、扇を手にした女たちも立ち上がった。
誰も何も叫ばなかった。
「王家万歳」と声を上げる者も、拳を掲げる者もいない。
ただ、拍手だけが鳴っていた。
開演前、三時間眠ると言っていた男も立っていた。
隣に立つ男が耳元で何か言ったが、聞こえなかった。
もう楽団の音さえ聞こえないほどだった。
王女は花冠を戴いたまま、その喝采の中に立っていた。
勝利した国の王女として。
そして、愛した男を失った一人の女として。
拍手は止まらなかった。
一度幕が下りても、止まらない。
再び幕が上がる。
それでもまだ、止まらなかった。