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【H×H イルミ】黒と白のアリア

第22章 幕開け


「……寝てるな」

「ああ」

「完全に寝てる」

規則正しい寝息だけが聞こえてくる。

「……そっとしとこう」

一人が控室の隅に置かれていた薄い麻布を手に取り、眠るイルミの肩へそっと掛けた。
イルミは少し身じろぎしただけで起きない。

「……」

「……」

「……惚れた?」

その様子を一人が小声で茶化す。

「訳ないだろ」

麻布を掛けた団員は、即座に否定した。

「俺は……性格重視なんだ」

また小さく笑いが漏れる。

「じゃあ、何で掛けたんだよ」

「こいつ、先生が譜面書き換えるたびに、徹夜で覚え直してたんだよ」

「おい、言うな」

「この前なんか奥さんに『この大変な時に、また先生!?』って怒鳴られてただろ」

「浮気かよ」

「相手、十七歳の男だぞ」

「違うわ!!!」

団員は、イルミの顔から目を逸らす。

「ただ……先生が風邪引いたら、みんな困るだろ」

その言葉に全員が一瞬だけ黙った。

「……確かに」

「やばくね?」

「やばい! 俺たち、完全に先生に調教されてるじゃん」

誰ともなく笑いを堪える声が、控室いっぱいに静かに広がった。


その時だった。

「……うるさい」

椅子から低い声が響く。

「「「やばっ」」」

笑っていた団員たちの顔が、一斉に固まる。



――ベルが鳴る。

「先生。お時間です」

イルミが目を開けた。


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