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【H×H イルミ】黒と白のアリア

第21章 最後の小節


結局、その場で着せられることになった。

「腕を上げてください」

「これ必要?」

「必要です」

「そうかな」

「直すところがあったら間に合わないでしょう」

それを言われると、反論する理由がなくなった。

上着を羽織る。

肩が収まり、袖が落ちる。
衣装係が背を整え、襟元を直した。

「……ぴったりですね」

王都へ来てから、採寸などしていない。
イルミは袖口を眺めた。

「いつ測ったんだろう」

「お母様なら、ご存じなのでは?」

「まあ、俺より詳しいかもね」

エレオノーラが笑った。

最後に銀の留め具がつけられる。

王宮音楽監督の徽章が胸元に留められた。


衣装係が一歩下がった。
それまで笑っていたエレオノーラも黙った。

普段着のまま譜面を抱えて廊下を歩いていた姿とは、明らかに違って見えた。
舞台に立つための衣装ではない。

舞台の下から、そのすべてを動かす人間のための服だった。

イルミは鏡の中の自分を見た。

「イルミ先生、すごくよく似合ってるわ」

イルミは目を伏せた。

「……そう?」

「ええ。とっても」

イルミはもう一度、鏡を見る。
黒一色に近い自分の奥に、淡い色のドレスをまとったエレオノーラが映っていた。

「ていうか、エレオがそれを言う?」

イルミは、エレオノーラを鏡の前へ引き寄せた。

「ほら」

二人が並ぶ。
黒と、淡い色。

エレオノーラは、鏡の中のイルミと目が合った。
それから目を伏せて、少しだけ笑った。

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