第17章 探究者達
イルミはゆっくりと身体を起こし、眠気ごと引きずるように机へ向かう。
紙を引き寄せる。
ペン先が五線譜へ触れた瞬間、頭の中で鳴っていた合唱が一斉に流れ出した。
イルミは苦しかった。
もう一ヶ月以上、限界を超えたまま走り続けている。
王命だから――違う。王に音などわからない。
ゾルディックの教育のせいか――それも違う。ククルーマウンテンは遥か遠い。
誰にも命じられていない。
誰にも強いられていない。
それなのにペンが止められない。
「……まるで奴隷だな」
自嘲だった。
痛む身体の奥底からまた音が湧く。
今だけは眠らせてほしい。
そう願うたび、新しい旋律が頭の中で鳴り始める。
ペンが走る。その手を止められない自分自身に吐き気がした。
イルミは閉じることのできない目を譜面に落とす。
ゾルディック家は代々音楽に仕えてきた。ならば自分もその運命からは逃れられないのかもしれない。
音楽に命を差し出すことは宿命なのだと、イルミは考え始めていた。